映画を観た後、小説を再読しました。

『ノルウェイの森』を初めて読んだのは高校2年生の時。

初めて読んだ時の衝撃は、今でも覚えています。

当時17歳だった私はたぶん、

この時生まれて初めて『深い表現』ってやつを

体感したんじゃないでしょうか。

『ノルウェイの森』を読むきっかけとなったのは

高校2年の時の現代文を担当していた平山先生の授業でした。

私は進学校に通っていたので、当然、授業は受験カリキュラム。

そんな中で、平山先生は

『受験テクニックだけを身に着けるなんてナンセンス!』

とばかりに、現代文の教科書に村上春樹の短編『蛍』を指定したのです。

授業で『蛍』を読み、彼が何を書きたかったのか、

そして私たちが何を感じたのかクラスみんなで話しました。

面白かったなぁ~、あの授業。

そしてその『蛍』に出会ったことで、

それが『ノルウェイの森』の原作になったことを知り

『ノルウェイの森』を読むことになったのです。

高2の私には、正直、よくわからないところも多かった。

九十九里の田舎の高校生には、

大体、東京の大学生のキャンパスライフってやつが想像しずらいし(笑)。

でも、寝るのも忘れて一気に読みました。

ワタナベの抱える苦悩と青春ならではの不安定さ、

直子の心の闇と光、そして緑…。

緑はむちゃくちゃなキャラクターだけど、私はとっても緑が好きです。

そして『ノルウェイの森』は、なんといっても下巻が好き。

『ノルウェイの森』で一番好きなシーンは、下巻の

公園のベンチで緑がワタナベ君に手紙を書くシーンです。

文庫版だと下巻の212ページ。

その手紙の中に

『ははは、』

というセリフが出てくるのです。

私は、この3文字にやられました。

この3文字こそ、これまでの緑のすべてが集約されていると思ったから。

というか、この3文字で、すべてを表す村上春樹に衝撃を受けました。

『ははは』の3文字には、緑の照れと諦めと悲しさと愛しさ…

全部ひっくるめて含まれていると17歳の私は思ったのです。

それは、今も変わっていません。

だからこそ、この緑がもっとも健気で可愛かった

この公園のベンチでの手紙のシーンを映画で描いてほしかったなぁ。

もう何回も繰り返し読んだ小説だけど、読むたびに新しい発見がある。

それって、すごいことだよなぁ。

『ははは、』の3文字に、

いろんな可能性を込められると衝撃を受けた17歳の私。

私も、そんな風に言葉を紡いでいきたいなぁ。