香港日記の途中ですが、きのう是枝監督の『万引き家族』を観ちゃったから。
今年のカンヌ映画祭で最高賞となるパルムドール賞を受賞したこの作品。
感想を一言でいうと『カンヌっぽい!!!!!!』って感じです。
それがいいとか悪いとかじゃなくて。
私と同世代のテレビ屋的には是枝監督といえばドキュメンタリーの名手で
私も彼のドキュメンタリーに影響を強く受けた1人です。
「是枝監督みたいなドキュメンタリーを撮りたいなぁ」って思ったものです。
その後、映画作品を多く撮るようになり、それらが全てリンクしてるとも
言われている今回の『万引き家族』。あらすじは…
東京の下町。高層マンションの谷間に取り残されたように建つ古い平屋に、
家主である初枝の年金を目当てに、治と信代の夫婦、息子の祥太、
信代の妹の亜紀が暮らしていた。
彼らは初枝の年金では足りない生活費を万引きで稼ぐという、
社会の底辺にいるような一家だったが、いつも笑いが絶えない日々を送っている。
そんなある冬の日、近所の団地の廊下で震えていた幼い女の子を
見かねた治が家に連れ帰り、信代が娘として育てることに。
そして、ある事件をきっかけに仲の良かった家族はバラバラになっていき、
それぞれが抱える秘密や願いが明らかになっていく
というもの。
この家族って、実は他人事のようで他人事ではなくて。
私だって、もしかしたらあの家族のような暮らしをしていた可能性も
あるのだなと思ってしまったり。
万引きはしないと思うけど、貧しさという点において。
それぐらい、今の日本にとっては「ありふれた」カタチであって
だからこそ、もはや意識すらしない存在になっていて。
こういう生活を強いられるケースを見て見ぬふりしているだけで
(というか、いちいち驚かなくなったというだけで)
実はいっぱいあるんじゃないかなって思ったり。
っていうか、いちいち驚かなくなってる「日本人としての私」に
ちょっとビックリした。
普通に「まぁ、あるよね。こういう貧しさって。」って思ったし。
それが今の日本の現状なんじゃなかろうか。
よくわからんが。
あと、何かのインタビューで是枝監督が話していたんだけど
「治(リリー・フランキー)は最後まで成長しないんだけど
翔太は成長して、このままの生活に疑問を抱き始める」って。
そこがすごく巧みに描かれていて、
それはまさに「成長を忘れた老い」と「無自覚に成長してる若さ」の
対比みたいなものも感じとれました。
とはいえ。
なにはともあれ、役者さんがすごいです。
安藤サクラさんの「背中のネギ」、リリーさんの「ステテコ」、
松岡美優さんの「ブラジャー」、そして樹木希林さんの「入れ歯のない姿」。
そういう細かいところに「生活」を演出するのがすごい。
そして、子役たちも。
あの男の子はきっと10年後ぐらいに柳楽くんみたいになるんだろうな。
(無事になってほしい)
女の子もナチュラルで、どこまでが演技なのかよくわからないぐらいすごかった。
そして、刑事役の高良健吾と池脇千鶴。
あれがいわゆる「第三者の正義と善意」の象徴で。
観ていて、恐ろしくなった。今の社会、そのもの。
ぶっちゃけこれって、パルムドール獲らなければ
ここまで話題にならなかったかもしれないし
派手さもないけれど。
今の日本のカタチとか、家族の意味とか考えさせられる。
そして、是枝監督の作品を見るといつも圧倒されるのは
「無駄なカットが1カットもない」という凄さ。
惰性や無駄がない。全てのカットに意味がある。
そこに身を委ねる気持ち良さも、ぜひ味わってくださいな。
『万引き家族』は絶賛公開中です。
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