今回は、PCインストラクターの琢ちゃんです!
本業はITエンジニアで、
10年ほどいわゆる人工知能周辺領域を
研究開発してきたという琢ちゃん。
数学を使う仕事で、ゴリゴリの理系男子です。
数学の勉強は自分がやるのも人に教えるのも好きで
学生時代に学習塾(集団)で
中学生に教えていた経験もあるんだとか。
現在は、南の島サモアで活動中。
それでは、いってみましょ〜〜〜!
*現在、どんな活動をしていますか?
キャリアアップのため周囲のエンジニアと少し違った視点を持ちたくて協力隊に来ています。途上国が真に必要とする支援は教育レイヤにこそあるとの持論から、技術色より教育色の強い職種を敢えて選択しました。エンジニアとしての知識経験を活かしながら、教師として当地聖教系中高一貫校で情報と数学を教えています。日本ほど学力が高くない点に苦戦しつつも、基礎に返っての楽しい授業の実施を心がけています。主にアニメの影響で日本に興味を持っている生徒が多いです。日本語や作法を教えると非常に喜ばれます。授業への引きつけによく使っています。
*どんなお部屋に住んでいますか?
学校の校庭の片隅(隣接敷地内)にある一軒家に 1 人で住んでいます。何人か他の教職員も同一敷地内に住んでいます。シングルベッド+マットレス・キッチン(オーブン・電子レンジ・炊飯器)・屋内トイレ・屋内温水シャワー・冷房・洗濯機・庭・鶏(目覚まし時計)があります。先日、学校のご厚意でスターリンク Wi-Fi が自宅まで延伸して自由に使えています。校門の斜向かいに中国系のスーパーがあって一通りの生活必需品が揃います。用務員さんが庭で取れたパンの木の実やバナナをよく持ってきてくれます。生活環境がかなり恵まれてしまっているぶん貢献せねばという使命感が半端ないです。
*派遣国で一番驚いたことは?
サモア人の言語運用能力の高さです。当地ではサモア語と英語とが公用語です。家庭では母語としてサモア語を話します。小学校の途中から外国語である英語を習います。ここまで日本と同じ条件です。そのうえで教育の質の高さを考慮に入れれば、日本人の方が英語を喋れて自然な気さえします。でも、日本人は英語を喋ることに大きな抵抗を持っている人が多いのに対し、当地では大多数の生徒にとって英語による外国人との対話が日常のものとなっています。もう少し深く分析すると、サモア人がサモア語の文法・語順・言い回しのまま単語だけ英語に置き換えて喋っていることに気づきます。英文法的には間違っていたり、一旦サモア語に翻訳しないと正確な意味を取れなかったりもしますが、だいたい伝われば OK という世界観ですね。日本の教育も学習途中段階としてこの喋り方を取り入れられないものかと思います。グローカル*中に新ちゃん丸ちゃんと上士幌小学校の出前授業の中で提起した「ちがうものアレルギー」「外国語アレルギー」的な課題の解決策になるかもしれません。違いを完璧に習得しなくても良いのです。
(*グローカルとは派遣前訓練に先立って全国各地で実施された任意参加型プログラムです)
*これまでの活動で一番うれしかったことは?
毎日数学の授業をしていて、生徒の伸びを実感できるときですかね。こっちの生徒、勉強は嫌いなときがありますが、クイズっぽくゲームっぽくやると楽しんでくれます。そこで、教室の黒板の隅から隅までに書いた 10 パズル※を好きに解かせるというのを 3 週間やってみました。最初のうちは計算順序(例:括弧の使い方)などに苦戦していた生徒たちですが、正解到達速度の徐々な向上が認められました。算数の楽しさを実感してもらえたのではないでしょうか。ちなみに 14 歳クラスの授業です。正直、扱える題材のレベルには予想以上に厳しいものがあります。が、焦らずじっくり授業を進めています。(*4 桁の自然数の各位に任意の四則演算を適用して 10 を作るヤツ)
*活動中の失敗や苦労していることは?
苦労。サモア人の顔を覚えることです。髪型のパターンが少ないからか、今まで見慣れてきた顔ではないからか、互いに似て見える人が多い。うちの学校の先生30人には、全部で 30 人くらいのうち、3 人兄弟が 1 組、2 人兄弟が 3 組、2 人姉妹が 1 組、双子が 1 組います。実際の血縁関係はないよ。見た目がそっくりなだけ。双子は特に大変。最初、同一人物視していたからね。ある日、2 人が隣接して存在する様子を見て驚愕しました。首筋の入れ墨の有無で判別可能と分かってからは、横に回り込んで判別していました。最近、不思議にも脳が 2 人の入り組んだ特徴の縺れを解けるようになってきた(でも言葉では違いを説明できない)らしく、遠目からでも判別できるようになりました!次は生徒400 名を覚えます。間もなく全生徒の写真帳つき創立記念誌が発行されるので、駒ヶ根の時を上回るペースで書き込んでいく所存ですよ。
*最近買った一番高いものはなに?
家の設備が整っていることもあり、食料品・消耗品を除くとほとんど何も買っていません。小さい島につき旅行に行ったとしても近場なので、そっちでの出費も少ない。過去最高単価なのは日本から送った生活物資(国際小包 20kg)の受取手数料が 100 タラ(5000 円/なんと送料の半額に相当)です。人件費が安い(1.5 米ドル/h〜)のに、手数料が高額な謎。この国の経済の仕組をもっと理解したくなって、当地の新聞を読むのが日課になりました。
*2年間でやりたいこと&これからの目標は?
ふだん東京の IT 業界という閉じた環境で仕事をしていて会えないような皆さんと分かり合うことが協力隊参加動機のひとつでした。これについてはグローカルと派遣前訓練に非常に大きな成功体験があるので、当地でも自然体で振る舞えば良いかと思っています。もうひとつ、キャリアアップに繋がるような客観的に実績と認められる何かを残したいのです。 「それは難しいよ」と言われるのは分かっています。でも、同じことを言われたグローカルでは 2 ヶ月半でちゃんと成果が出ました。住民・事業者・行政が別々に見る複数の地域課題の一部が互いに本質的に似通っていることを示し、それらの総合的な解決方法を提案し、イベント実施という形でコンセプト検証を行い、イベント定期化に向け機運醸成しました(PoC 止まりにならない目処がそれなりにあると信じている) 。サモアにも何か爪痕を残せないかなぁと思っています。しかし、入国から 2 ヶ月半が経過した現在、平日は学校の仕事をこなすのに休日はリフレッシュするのに精一杯で、初手の初手である住民・事業者・行政職員と知り合う段階で躓いています。ただ、駒ヶ根で先輩隊員の報告書等を読み漁ったり直にヒアリングしたりして自ら引いたロードマップによれば、人脈&信頼構築段階には最初の丸 1 年を費やして良い計算になっていますので、焦らず少しずつ進めていきたいと思っています。
【2025/09/04追記】まずは日本人隊員同士で連携して動ける基盤を築こうと思ってコミュニティには顔を出すようにしています(海に行ったときに先輩隊員に撮ってもらった写真を提供しますね)。あと、他国派遣の同期隊員から仕事関連の相談を受けることがありますが、国境を超えた成果に繋がりそうな気がして嬉しいですね。ロジックの通った企画書を書くのとか得意なので頼ってください!
*今、一番欲しいものは?
知識と教養です!今まで海外在住歴がありませんでしたので、持っている視点が日本的なものに偏ってしまっています。特に思想や宗教に関する知識が欠けているかな。日本では科学に基づく判断が全ての世界で生きてきたので。うちの学校はカトリックなのですが、つい先日も昼のお祈りの時間の態度が悪いと同僚(女性・50代)に怒られてしまいました。それ以来、お祈りの時間は毎日彼女の隣に座るようにしたら、今は逆に可愛がられてますけどね。当地の人の思想の根本にはキリスト教があります。彼らの心を掴むには教義を習得すると良さそうです。習得の効率化にはキリスト教の成立や浸透の時代背景の把握が有効だと思うと、世界史を学ぶモチベーションが沸きあがりました。キリスト教が全世界に浸透したキッカケはローマ帝国での国教化だというのは分かりやすいです。しかし、キリスト教にしてもその源流であるユダヤ教にしても、ヘレニズム世界の片隅であるエルサレムから生まれた。周縁の地から世界宗教が生まれた例は仏教やイスラム教にも当てはまるみたい。これは偶然の重なりなのか必然なのか?この辺に関する自分なりの理解を形成したく、関連した本を読み漁るようになりました。詳しい人が居たら、ぜひ教えてください。
【2025/07/04のきもち】当地での人脈です。いや、職場の人間関係は非常に良好ですよ。ただ、皆さんご自身のご家族をとても大切にされる方々なのですね。というか、核家族化&少子高齢化の進んだ日本と違い、めちゃくちゃ壺型な人口ピラミッドをしているサモアでは、休日は大家族で協力して子どもを見守っていこうという空気感が強いです。なので、職場の外で同僚に会う機会は滅多にないし、職場関係ない現地人と仲良くなる機会も限られています。この辺を整備して、当地の人の色々な感覚を取り入れて、活動の方向性などを見極められるようになりたいですね。ちなみに日本人先輩隊員らとは仲良くなれましたよ!隔週くらいで集まって食事をしたり海に入ったりしています。このコミュニティから何か突破口が見えてくることもあるかも。
*みんなにメッセージをお願いします!
8 班のみんなをはじめとする他国同期隊員と上士幌町民(グローカル実習地)の皆さんに向けて書きます。お元気でしょうか。私は元気です。正直、苦戦はしています。いや、皆さんのお力添えがあってグローカルと派遣前訓練とをスタートダッシュからフィニッシュまで予想を大幅に上回る絶好調で進められたので、それとの対比です。なので、任地での「ドタバタ」は想定どおりとも言えますね。ただ、グローカル中や訓練中に職員に言われた「任期を全うしたらそれだけで成果」の言葉の意味が少しずつ分かってきた感もあります。少し守りに入って無理せず完走に拘る姿勢も重視したいと思います。帰任後にお会いできるのを楽しみに引き続き頑張ります!
【2025/09/04追記】実は、この段落だけ他の段落より2ヶ月後に書いています。2ヶ月前の自分は成果重視型思考が非常に強く、焦りのようなものを感じていました。でも、キリスト教や世界史の教養などが少しずつ深まってくるのを実感すると、この機に乗じて自分を磨いておけば成果とまでは言えなくても帰国後に生きるものが残りそうだな〜と視野が広がり始めました。特に1年目のうちは成果創出に気を取られすぎず今までの人生で未挑戦だった領域(勉強に限らず)に取り組むことに主眼を置くという戦略もアリかな〜と思い始めています。帰任後に少し成長した自分自身をお見せできるのを楽しみに引き続き頑張ります!皆さんも身の安全と健康に気をつけて〜。
【あとがき from non】
訓練所での生活班が一緒だった琢ちゃん。とにかくなんでもメモをして、あらゆることを分析していて、自分の興味を持ったことに全力投球な姿勢は本当にすごいなぁと思っていました。全てを解析したいと言うのがもう本当に『理系魂』って感じなんだけど、真逆の「ド文系」の私としては「わからないことがあるから面白いんだよ」って伝えたい…!!わからないことは、想像力と創造力の余白だからね(笑)。400人の生徒たちも琢ちゃんならきっとすぐに覚えるんだろうなぁ。というか、もう覚えてそう…。最初の3ヶ月、私もやたらと焦ってたから琢ちゃんの気持ちすごくわかる。だけど、アウトプットを目的としたインプットはクリエイティブとしてつまらなくなるから、まずはインプットして何らかのアウトプットができたらいいな〜ぐらいの気持ちで暮らそう!そうしよう!帰国したら、みんなで会おうね!!

琢ちゃん、ありがとうございました。
ということで、次回は誰かな〜〜!?
non。