声を失う代わりに、命を選択した父。

頑張ってリハビリし、退院し、ようやく手に入れた穏やかなセカンドライフを

母と楽しむのだと思っていました。

実際、2人でちょこちょことドライブに行ったり

バスツアーに行ったり楽しんではいたのですが…。

神様はいじわるです。

予防のためにその後も抗がん剤治療を続け、

定期的にPET検診を受けていたのですが

今年、顔の奥に再び癌がみつかりました。

それでも父は、絶対に生きると誓い抗がん剤治療に励みます。

副作用でどんなに具合が悪くなろうとも、

抗がん剤を休むことはありませんでした。

しかし、今年の夏。

やはりこれもまた、おそろしく進行性の癌だったことがわかったのです。

発見したときはほんの小さな癌だったのに、

わずか4ヶ月程度で癌は倍以上に。

しかも、脳幹の近くまで侵蝕し、手術は無理だといわれてしまいました。

主治医の先生から、

『今のうちに、行きたいところに行っておいてください。』

と言われたものの、まじめな父は治ることを信じて抗がん剤治療を休むことなく

病院に通っていました。

私たち家族は、夏の段階でこの癌がいつ破裂してもおかしくないし

そうなったらもう手の施しようがないということを

お医者さんからいわれていました。

その時の混乱や複雑な気持ちを忘れることはできません。

でも、それはまだまだ先の話で現実のものとは思えませんでした。

…またあした。