これは、田村隆一さんの『帰途』という詩の一節。

この間、気になっていた映画『恋の罪』をようやく鑑賞。

相変わらず園子温監督のグロいけど目が離せなくなるストーリー展開に

驚愕したり感心したり、うむむ…ってなったりしたのですが

この映画の中で最も印象に残っているのはこの『帰途』という詩。

言葉なんか覚えるんじゃなかった

言葉のない世界

意味が意味にならない世界に生きてたら

どんなによかったか

あなたが美しい言葉に復讐されても

そいつは ぼくとは無関係だ

きみが静かな意味に血を流したところで

そいつも無関係だ

あなたのやさしい眼のなかにある涙

きみの沈黙の舌からおちてくる痛苦

ぼくたちの世界にもし言葉がなかったら

ぼくはただそれを眺めて立ち去るだろう

あなたの涙に 果実の核ほどの意味があるか

きみの一滴の血に この世界の夕暮れの

ふるえるような夕焼けのひびきがあるか

言葉なんかおぼえるんじゃなかった

日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで

ぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる

ぼくはきみの血のなかにたったひとりで帰ってくる

なんて切ない詩なんだろう。

『言葉』が、自分が大好きなモノだけに、刺さるものも深い。

圧倒的な感情をもてあました時に、言葉の前に立ちすくむ・・・

そんな自分の姿を連想して、私はやっぱり途方にくれる。