20年来の付き合いになる古い友達がいて。

(っていうか、20年経っていたことにお互いビビった…

そりゃ歳、とるわ〜みたいな)

彼は同じようにテレビ業界で生きていて、というか、スタート地点が一緒で。

20年(弱)前、私たちはテレビが好きで、テレビの世界で生きて行きたくて

この世界に飛び込んだ。

今よりも、表現方法が少なかった時代で

(なんてことを、自分が言う日がくるなんて…)

当時、テレビを目指している人間なんていうのは、もう本当に根っからの

『テレビ大好き王国』の民なんですよ。

今よりも仕事もハードだったしね。

 

自分も何か表現したくて、表現できると思って、信じていて。

その『何か』というのは、

私たちには共通していて「とにかく面白いもの」を作りたくて。

その意味で、気があったので一緒に映画を見たり、

ご飯を食べたり、本を読んだ感想を話したり、

時として一緒に旅に行ったり…同じ時間をたくさん過ごして、

同じ景色を見ていた。

 

同じ景色を見ていながらも、二人が求めているものはちょっと違って。

私は、とにかく『マス』に刺さるものが作りたかった。

『面白いものを作って、一億総内輪ウケ状態』を作りたくて。

とにかく目に見えないデカいものを相手に、

企画を作ったり原稿を書いたりして。

一方彼は、『コア』にこだわっていて。

とにかく「わかる人だけ猛烈に反応するもの」を追求していって。

それは、私たちがお互いに担当していた番組の個性によるのかもしれないけれど。

あぁ、だから同じ景色を見ていたけれど、

見ていた先にあったものは二人とも違うのかも。

(なんか、この一言でいろんなことが急に今、腑に落ちた。)

 

その後、20年の時を経て私は放送作家に、彼は演出家に。

立場は違うけど、相変わらず「テレビ大好き王国」の民で。

この間、久しぶりに飲んだ時になんかの流れから、テレビの話になって。

それは、WEBの友達といつもするような

「テレビをとりまく時代について」という話ではなく

「自分とテレビとの距離感」みたいな感じで。

こういう話をお互いにしたことがなかったから、とても新鮮で。

二人とも相変わらずテレビが大好きだし、

この先どうなっていくのかわからないけれど

自分たちが目指すものはやっぱり

「面白いものを作る」っていうこの一点は変わらなくて。

ただ、今。

二人が見えている景色が全く違うことに気づいて、

というか逆転していて面白かった。

 

20年前、

とにかく「マス」を取り込みたかった私は、10年ぐらい前から

「半径1メートルの人を幸せにできなければ、

テレビの前の人を笑わすことなんでできない」

って考えていて。(はあちゅうより、先だよwww!)

これは結婚したことも影響があるのかもしれないけれど、

とにかく自分の目の前にいる人を

幸せにできるものを作らなければ、

その先にいる「マス」にはなにも響かないと考えるようになって。

一方、「コア」にこだわっていた彼は

とにかく今、一人で多くの人に刺さるものが作りたいという。

それはテレビの未来という意味も含めて、

もっとわかりやすく面白く身近に感じられるものを…。

それをひたすら追い求めている。

 

なんだろう、どこで私たちの見えていた景色は交差したんだろう。

20年経つと、

人の考えってこんなに変わるもんなのねって驚いたり笑ったり。

なんだか面白い発見のある夜だった。

 

同じような時間軸でテレビと密に接してきた人と。

こんな風に話すのは、ぶっちゃけ照れくさくて。

他の人ならできないけれど20代の時に同じ景色をみて、

同じように苦しんで、同じように楽しんできた彼になら素直に話せる。

結局、「テレビと自分」って話って

自分と仕事との向き合い方ってことになるんだけど

同じスタート地点に立っていた人ってのは、こんなにも無条件に、

時には言葉を端折っても、気持ちや考えが伝わるものなのか。面白い。

 

この先、私たちがどうなっていくかわからないけど。

やっぱり私たちは、ずっとテレビが大好きなんだろうな。

 

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